カラーアニメーションを牽引したスタジオは、今やほとんどが何らかの形で再編され、ほとんどが名を潜めている。
たとえば、東映アニメーション。もちろん、今もある。
たとえば、タツノコプロ。もちろん、今もある。
今、アニメーション業界の大手といえば、いくつかのスタジオが上げられる。
といっても、どれから上げようか。
タツノコプロから独立する形で出来上がった、プロダクションI.G.か。
ナムコバンダイの傘下に入ったサンライズか。
大量の資金を背景に、大量の赤字を出しても頑張るゴンゾか。
いや、やはり“仕上げ”から始まったマッドハウスの強さは今もまだ損なわれていないか。
ここでわざとごちゃごちゃに記述したが、アニメーションを製作するにはいくつかの行程がある。
資金面でのプロダクション会社。
制作面の実質指揮管理をする制作会社。
実働部隊である作画会社。
作画をフイルムや映像データに変換する会社。
それとは別に、海外に設立された外注引き受け会社。
フリーランス作画家、フリーランス演出家。
制作会社には「制作部」がある。制作スケジュールを管理し、作画するメンバーに紙を供給し、作画済みの品物を回収する。およそ1ヶ月で「脚本」「絵コンテ」「演出」のチェックが終わった青写真を用意し、演出家から原画たちへの作画に対する要求などを打ち合わせ、全カット分の作画を割り当てる。ここまでで1週間以上を消費している。
原画が上がってくると、作画監督のチェック、演出家のチェックが入る。ここまででさらに1週間が使われる。
それぞれのチェックが終わった原画は動画行程に順次流されていく。原画家が指定したコマ割りの通りに動画家は動画を書き起こしていく。
動画の仕上がりや、手の早さに応じて、制作部は仕事を割り振っていく。これらの仕上がりに関しても作画監督のチェックが入るはずだが、スケジュールが押してくるとそれもままならなくなる。
動画チェック行程に入る。
動きのおかしなものなどを確認し、コマがきちんと流れていれば仕上げ行程に入る。
この段階まで来ると、もう制作部は24時間体勢になる。
10分刻みぐらいで都内の指定箇所に走り回ることになる。
制作部が録音スタジオに詰めることも可能らしいが、ここには演出家と録音監督が音声部分の演出を担当するので、監督がいるときといないときがあると考えられる。
制作部はそれ以外の仕事に手一杯。作画担当者たちは既に仕事が終わっているので、次の仕事に移っている。
で、仕上げ行程に入っているわけであるが、この段階は大抵アフレコと被っているので、昔ながらのアフレコ風景になりがちである。
で、テレビ局に音声と映像をきっちり合わせたアニメーションとして納品するのだが、映像と音声を組み合わせても、実は少しだけ尺が合わないことがある。それを整えるのが編集という行程である。
編集が終わったら、ここで初めて納品できる。
これでオープニングやエンディングで出てくる名前に対してだいたい解説できたはずだ。
アニメーションを理解するとき、制作部視点で考えるとわかりやすい。
作画的な技術は年々増しているが、それはどういった原画家がいるスタジオに詰めていたかを考えてみるしかない。これは地味な話だが、スタジオに代表的な原画家がいるかどうかを考えればわかりやすい。
スタジオボンズならば、故・逢坂浩司氏だったろう。
プロダクションI.G.ならば、後藤氏や黄瀬氏だろう。
スタジオの代表的な原画家がいないこともあり得るが、それはキャラクターデザインとの交流でどうにかしているかもしれない。
今は、CG行程があり、制作工程は複雑化しかねない。
だが、CGは一度デザインしてしまえばあとはレンダリングのトラブルをどこまで避けられるか、という話だけである。負担は比較的少ないと言えるだろう。
企画行程では、どのようなアニメーションを作るのか話合う。
テロップに書いてある「企画」「プロデューサー」には、スタジオよりもテレビ局や企画会社のメンバーが名を連ねる。
たとえば、okama氏はコンセプトデザインなどで多種の仕事をしているが、このような仕事行程は最近になって出てきた印象がある。
アニメーションはいよいよ多様な仕事で埋め尽くされている。
でも、単価がほとんど上がっていないような……。
アニメーション業界とゲーム業界は「好きでなければやっていられない仕事」と言われるのは、この「24時間体勢」が存在する事実と、「単価が安い->給料が安い」という二点によって真実となっている。
その上、アニメーションは15年前の放映時に発生した「エヴァンゲリオン現象」によって、一気に枠が増大し、受注可能な作画量より遙かに多くの作画をこなさなければ行けなくなった。
今、韓国と中国にある外注作画会社がなければ、いくつかのアニメーションは作画が出来ないという意味で成り立たなくなる。
新しい会社は、企画会社であったり、制作会社であったりする。
さすがに、お金がないとプロデュースは難しいので、あまり新会社は聞かない。初耳の会社だと思った「flying dogs」は元ビクターエンターテイメントである。親会社のJVCは「HisMasterVoice」であり、元から犬と繋がりがあったのでわかりやすかった。
バンダイビジュアルがサンライズを傘下にいれるとは思っていなかった。色々とありますね。
企画会社としてちらほらと動いているのが「カラー」という会社である。劇場版の「エヴァンゲリオン・序」は実はGAINAXが作画のみとなっているような状況である。庵野監督は「カラー」を設立していて、そちらから指揮を執る形になっている。
脚本の提供を行うための会社もある。こちらは脚本家の名前しかでないので把握が困難である。
ここまでだらだらと書いてきて、つまるところ何が書きたかったかというと、スタジオがどこそこだから、そのスタジオが作っていた前のアニメーションと同じように面白いに違いない、という考えは正しくない、ということ。
アニメーション1クール単位で管理する監督によって、当然、面白いかどうか左右される。だが、監督も作画家も得意不得意があるのである。マッチングしなければ、当然上手くいかないこともある。
監督、演出家、作画家を全体的に見通した上で、前回のアニメーションも面白かったのならば、それはきっと面白いと判断できる。それがオープニングアニメーションを見る意義である。
次のスタジオが生まれるならば、きっとまた面白いことをやってくれると期待する。そこに所属する人物が何をするのか、気になっていく。
制作部が関わった作画家は、一回限りなのかあるいは毎回仕事を依頼するのか、それを把握するだけでも次の新鋭演出家の登場を予感することが可能であろう。
なぜならば、個人的に絶賛応援中の演出家・松尾衡氏、アニメーションに関わったのは制作からである、と何かで聞いた。
ロジカルで、演出について全てを言語で語れる優秀な監督である。
今監督とも演出助手や演出で関わっている。
映画しないかなー。
新しいスタジオには社長がいる。株式会社設立には取締役が数人必要であるから、その名前を見れば何を得意とするスタジオかわかる寸法である。
――であるから、声優ファン、スタジオファンを経て、テロップファンに変化してきた逢坂自身にとって、これからもじわりと分析しつづけて見たい。